姫が遺したもの

シェルティ・レスキューが看取った子は、ゆら、被災のウィリー(トッド)、マリに続いて、姫が4頭め。

マリの時は、DIC(播種性血管内凝固症候群)での死亡が推定されていたのだけれど、遺体は病院から戻ってきたので、正確な死因はわからなかった。
死因は、そう、わかっても・・・マリが戻ってくるわけじゃないけれど、手を尽くそうにも尽くし切れなかった無念は、私たちだけじゃなくて獣医師の先生たちにもあったと思う。
DICは予後不良に陥ることの多い病態で、医師(獣医師)の経験や予測で防げることもあるという記事を読んだりもした。

いったん話は飛ぶけれど、この10年くらい、動物愛護精神の拡大があったり、獣医師を志す層の変化があったりで、獣医学科の解剖実験の数が減っているという話を、以前から聞いていた。
学校によってなのか、解剖を拒否することもできる?といったような話さえ聞いたことがあった。

そして、シェルティ・レスキューで保護した颯太(そうた)は、骨折の治癒が長引いてしまい、他の犬の骨を移植してある。保存骨といい、大学病院内で保存されていた、実験動物だったビーグルの骨だ。

さらに、私の18才半の愛犬は、今までに出血性大腸炎や3回の腫瘍切除や抗がん剤治療を行ってきた。

獣医学の発展がなければ、尊い命の犠牲がなければ、あり得なかったことの数々。
動物愛護精神の高まりによる実技・実験数の減少で、発展の機会が減ってしまったり、若い獣医師の成長の足を引っ張ることになってしまったら。

2月にマリが逝って4か月、折に触れて考えていたこと。
亡くなった子を、献体に出すこと。
サリーがお世話になっている動物病院に、相談していた。
一般の動物病院でも、若い先生にはなかなか執刀の機会が回ってこないらしい。
それは大学在学時の経験が昔に比べて少ないことや、飼い主さんの要望でどうしても経験豊富な獣医師に執刀を求められがちであること、亡くなった子を献体に出そうとする飼い主さんがそもそもあまりいないことを伺っていた。
そして、献体をしていただけるのであれば、ありがたいと言って下さっていた。

ならば・・・
救えなかった子の土台の上に、救える子が増えるのであれば。
そのために力になれるのであれば。
この時期は3月に卒業して、獣医師国家試験を受けたばかりの先生がいる病院もある。
姫の体がまだ温かいうちに、相談していた動物病院に電話をし、早速連れて行くことになった。

受け渡しの時に、おなじみの先生に
「命を無駄にせず他の子のために役に立つよう、大切に扱います。ご遺体の扱いや返却についてご希望はありますか」と言われた。
特に希望はありませんが、はっきりした死因がわからないので、目立つことが見つかれば教えていただければ十分です。それと、あとでかまわないので、お葬儀の日がわかればお願いします。お参りに行きますので…葬儀は合同で構いません。そのように答えた。

昨夜遅くに電話があり、今日の葬儀と教わった。
紫陽花に雨・・・

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午前中に合同で焼いて、今日一日は本堂に安置し、数回のお経をあげることになっていた。
本堂まで行ったものの、カメラは遠慮させていただいた。
合同ということで、大きな骨壺が金色の仏様の前に安置されていたのが見えた。
姫はあの中に、他の犬猫と一緒にいるのだろうと思った。
もにょもにょもにょと、遠くからひとり話しかけた。


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生前の姫は、子犬を生んでは彼女の所有者であったブリーダーに金を遺した。
ペットショップから彼女の産んだ子犬を買った見知らぬ人たちに、ひと時の幸福を遺した。
子犬たちが最後まで幸福だったかは、わからないけど・・・

長崎でレスキュー要請があった時、一番若い1頭は親族が引き取ったと聞いた。
残った3頭は高齢の子ばかり。
その中でさらに選ぶことなど、できただろうか。
姫は一番年齢が高いと思われた子だった。
私たちは彼女もレスキューすることにした。
そのために、後味の悪い思いをしないで済んだのだから、助けられたのは私たちだった。

姫は生前、たくさんのものを人間に与えてきた。
この上、死んでまで献体という形で、その体を人間に与えることについて、ためらわなかったわけではない。
迷ったが、姫の体を生かし切って、これから無駄になる命がひとつでも減ってくれればという願いの方が強かった。
姫のためにかかった医療費も、ご支援下さっている方たちからのお金だから、姫の体がいつかめぐりめぐって、誰かの愛犬の役に立てばと考えてみたりもした。

1月から5月まで、一番状態の悪い姫を預かり、家庭犬として恵まれた環境に置いてくれた預かりボランティアさんには、本当にお世話になりっぱなしでした。
その身を削って、人間に対して与えるばかりだった姫に、短い間でも幸福を与えてくれた、唯一の存在が預かりボランティアMさんとそのご家族だった。

腎臓も肝臓も悪かった姫が亡くなった時、脱糞はあったけど、尿は数滴しか出なかった。
歩けない状態、吠えまくる様子、そして無尿。
私の家に来た時には、もう相当程度、尿毒症が進行していたのだろう。
肝性脳症だったのか、尿毒症による脳障害なのか、すっかり頭の中が壊れてしまった姫にとって最後の幸福な記憶は、我が家にいた3日間ではなく、Mさんの家で過ごした日々だろうと思う。

Mさんの存在がなければ、私たち人間は姫になにひとつ与えずに、ただ奪い取るだけだっただろう。
感謝してもし切れない。

Mさん、ご家族さま、姫を幸せにして下さって、本当にありがとうございました。

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by naomi_nmi | 2012-06-09 22:53 | その日まで  

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