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みーなのこと

8月の終わりに、岡山市の保健所に小さなシェルティ風の女の子が収容されていた。
写真を見て、シェルティであるか確信が持てなかったこと。
保健所の検査でフィラリアが強陽性であったこと、同時に体調が良くないようだと保健所の担当者から直接聞いていたこと。
空輸をすれば命がどうかわからないくらいだったので、現地に預かり先のない以上、保護は出来ないと見送ることとしていた。

シェルレスブログに拡散したので、その後の確認のために保健所に電話をしたら
「地元のボランティアが責任を持って保護すると言っている」ということなので安心して、情報提供をしてくれてい方にその旨、連絡をしたところ・・・

「実はその子の保護をすることになってしまいそうだ」とのこと。

話がまったく見えず、よくよく聞いてみると、情報提供者の人と岡山市のそのボランティアさんの間で、なぜかシェルレスの依頼により引き出しをすることになったという。
・・・なんのこと? うちは出さないつもりで保健所に情報のみ問い合わせをしたのに。
早合点と確認不足と、助けたさゆえの暴走。

行き場がなくなってしまったこの子を不憫に思い、レスキューで保護することになった。
仮の名をみーな。
この時点で、どこまでこの子の体調が戻ってくるのかは、予想ができなかった。
保健所の中でできる健康診断は限られているのだ。
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収容中に体調を崩し、地元のボランティアが病院へ連れて行き、慢性腎不全であることが推定された。
検査数値が振り切れているBun140オーバー、高いクレアチニンとリン、低すぎるアルブミンとカルシウム、それに貧血。
これだけの数値なら、2週間くらいしかもたないと、普通の獣医ならそう考える数値。

私たちは、あきらめられなかった。
地元ボランティアから情報提供先の預かりさんにみーなは渡され、鳥取県の動物病院で治療を継続することになった。
預かりさんに対してはZENママとふたままが医療や預かりさんのサポートをして、万全の態勢で保護をしようということになった。

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療法食は言うに及ばず、市販フード、手作り、考え付くあらゆる食べ物を試した。
貧血と低アルブミン対策のためにサプリメントを用意し、Bun対策のためにコバルジンやネフガードを試した。
何度も静脈点滴を行い、皮下点滴も連日行った。
もちろんフィラリアのために投薬も行った。

情報提供者だった預かりさんの仕事環境が変わるとのことで、東京で預かることにした。
そのタイミングで、このブログに預かり日記を公開するつもりでいた。
とはいえ・・・慢性腎不全は、治癒の見込みはない。
預かり先は我が家。すなわち、看取りが前提ということだ。
それでも、そんな子を保護していることを、ご支援者のみなさまにお知らせする責任があると考えていた。
10月26日、パレット×ロンリーペット道満譲渡会の前々日に、みーなは米子から羽田へ飛んできた。


みーなは我が家でも、ほぼ何も食べなかった。
犬用の食事は、おやつ類でさえ拒否した。
人間のテーブルの上のものを欲しがった。
けれど、それを与えても吐いてしまう。

推定年齢は高く見積もっても7~8才、この子はいったいどういう食生活をしてきたのだろう。
適正体重5キロ程度のはずの小さな小さなシェルティ(たぶん)。
可愛い可愛いで人間の食卓から食べ物をもらい、犬のごはんは自分の食べるものと思わないで育ってきたのだろうか。
しかし、シーザーというトレイに入ったご飯は何度か食べたという。
どういう育ち方・・・考えるのも嫌になった。
味の濃い人間の食べ物をあげつづけてきたのか。
それでなくても腎臓の悪い子が多いシェルティ。
シェルティの腎臓はガラスの腎臓とさえ言われるほどなのに。

みーなの腕には、静脈点滴を行った跡があった。
腎不全になったあげくに、医療費が追い付かなくて、捨てられたのか。
むちゃくちゃな飼い方をして病気になっても、それでも最後まで手元に置いて、その子が息を引き取るまで、互いに通じ合うやり方で心を通わせているならしょうがないんだよ。
人に迷惑かけていなければ、他人がとやかく言えることではないのだから。
少なくとも今の日本では、偏った溺愛でも虐待とは認定されないし。
それを、捨てるってどういうことだよ。
ほんとうにもう、うんざりだよ・・・


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2日たち、3日たってもみーなは何も食べなかった。
もう死期も遠くないのかと思い、食べるものならこの際、食卓のものでもなんでもと思っていたが、それさえも口にしては、結局、吐き戻した。
何も食べない口の中にコバルジンを入れるわけにも行かない。
点滴以外に何もできなくなってしまった。
この間に、なにか食べるものはないかと試し続けて1週間、ちょうど1週間。
そして岡山から保護して2か月。
何も食べないのにトコトコテケテケ歩き回っている、不思議な子だった。

昨夜の点滴は300ccを入れた。
点滴を上から落とすくらいでは入らなくなっていたので、シリンジポンプで50ccを6回。
それでも途中から入りが悪くなって、一度、吸収されるのを待って入れた。
300ccを入れるのに30分以上かかった。

思えばその点滴を入れた昨夜から、おしっこをしていなかった・・・

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留守番はクレートでさせている。
今朝、6時半に母が、7時に私が仕事に出た。
私は道満に荷物をとりに行き、夕方4時過ぎに戻ったら、クレートの中にみーながいるので驚いた。
母が自室から声をかけた。
11時半に母が帰宅した時には、亡くなっていたという。
私が家を出る時には、クレートの中でもぞもぞしていて、目を合わせたのだけれど・・・。

もしかしたらとおむつをはずした。

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小型犬用サイズのおむつのこの尿量が300ccあるはずもない。
ほとんど色のついていない、薄い色の。

腎不全末期の乏尿。
姫の時もこうだったっけ・・・・。

みーなは保健所ではない場所で、ひとり旅立っていった。
昨夜の点滴の時はずっと母の膝にいて、夜、クレートで寝るまでずっと母と一緒にいた。
それがせめてもの救いかもしれない。

保護した直後のみーなの顔と、亡くなる前の顔を比べてみてほしい。
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本当に体調の悪そうな悲惨な様子からは、少しは穏やかになっているけれど・・・
でも、最後までやっぱり、さびしそうな顔をしていたように思う。

慢性腎不全は治らない。
手厚い医療を施して、時間を引き延ばすしかない。
その引き延ばされた時間の中で、温かく幸せな思いを与えること、それがみーなのような子に対して、わたしたちができるただひとつのレスキューだったと思う。

昨夜、みーなの預かりさんから「家族に迎えて最後を看取ってあげたいと希望している」と申し出があった。
預かりさんはご自身に持病があり、その飼育環境は決して余裕のある状況ではないため、ふたつ返事でみーなをお譲りしますとは言えなかった。
それでも、うちに来て、まるでストライキでもするように何も食べなくなったみーなにとって、預かりさんの家の方が安心なのかなとも思い、譲渡の検討を始めたところだった。


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先ほど、お世話になっている動物病院へ、献体のために預けてきました。
みーなの医療費は寄付やフリマなど、みなさまからのご支援で賄われました。
本当にありがとうございます。
ご支援いただいたお気持ちを無駄にしないよう、獣医療の発展や若い獣医さんの勉強のために、ひいては今もこれからも苦しむわんこたちの役に立てるようにと願っています。


みーなは姫と同じく、合同のお葬儀で空に帰ります。

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ありがとうございました。
by naomi_nmi | 2012-11-02 19:20 | その日まで